我が家にビーカーがある、というかあった。『あった』というのは、先の大阪北部地震で、このビーカーとガラスのコップ1つが倒れて、ヒビが入ってしまったからだ。
このビーカーは実験室などに普通に見られる50mlのもの。今は同じようなものを買おうと思えば、ネットで数百円で可能だろう。
これが我が家に来た時はそれほど簡単に入手できる時代ではなかったと。いわゆる科学教材屋さんに行けばあったのだろうけど、小学生の狸は存在を知らなかった。
夏休みの小学生とその親御さんが苦労する自由研究で、狸はビーカーを使いたいと思ったのだ。父親に聞いたが入手できそうになかったので、望遠鏡の話で出てきた先生に相談した。すると学校の出入り業者に買えるように話をしてくれた。細かいところは覚えていないが、多分、母が学校にお金を持って行って買ってくれたのだろうと思う。
自由研究の題名は『庭のコケの研究』だったが、その研究の中で何かにビーカーを使ったお陰?で、賞を頂いた。
その後、存在は忘れ去られ、数年前に実家の片付けをしている時に発掘された。すずめが『可愛い』と気に入り、我が家に持ち帰られてコーヒーのミルクの計量に使用(つまりミルクポットとして)されていた。
損害額は微小だが、とてもセンチメンタルな気分になってしまった。
©Tanu記