黒豆を炊いた。
お正月の黒豆と言うと、ちょっとしたエピソードがある。
すずめと結婚する前のこと、お正月に狸実家に遊びに来た彼女に狸母がおせち料理を出してきた。
その中に黒豆が有ったのだが、すずめは一粒食べて『破れずピンと張った皮の色艶といい、ねっとりとした食感といい、醤油と甘みのマッチした出汁の味といい、これは良い』と判定した。
すずめの母上は料理が上手で、すずめが言うには、お正月の黒豆は他では母上の物より出来が良い物には当たったことがないという事だった。
『こんなに上手に黒豆を炊く御母さんのところで育った狸は大丈夫かもしれない』と安心した? そうだ。
その甲斐あって無事結婚した年の暮れ、なんと衝撃の事実が判明した。狸母がレシピを見ながら黒豆の準備をしていたが、そのレシピが、すずめの母上の使っているレシピと全く同じものだった。
狸母は料理研究家の土井勝先生の物を書き起こした手書きのレシピを使っていたが、まさか全く同じとは。
更に土井先生のレシピには書かれていないが、狸母は『丹波産黒豆の大粒』を使っていたが、デパートの売り場も含めてそれも同じ。
同じ材料を同じレシピで。土井先生のレシピの再現性の高さが証明された。
美味しい黒豆とともに土井先生には感謝しきり、である。
狸が炊いた黒豆? きっちり再現されて美味しく出来たのだった。
©Tanu記