先日の出社日の朝のことだった。
最寄り駅に着いて改札を通ってホームに立ち、さぁとポケットを探したらマスクがない。かばんの中に入れておいたはずのスペアもない。
家まで取りに帰ろうかと思ったが、回数券で入場してしまっているので1回分がフイになってしまってはもったいないし、そもそも家を早く出発して空いた電車に乗ろうという時差出勤の効果も薄れてしまう。
困ったなぁ、この駅には売店もないし。
『そうだ!』と思いついた。すずめは狸が出社する日は、お弁当を作ってくれるが、そのお弁当をバンダナで包んでいるのだ。
『よし、このバンダナを使おう。オフィスに行けばマスクのストックがある。』
バンダナを三角に折って、西部劇の銀行強盗のごとく顔に巻いた。幸いなことに大きめのバンダナなので、顔が大きな狸にも楽勝でフィットした。
そのまま何食わぬ顔で車内へ。意外にも周りの人からの視線は感じない。要は口を覆っていれば問題ないという感じで、布マスク同等と認識されているらしい。
結局そのまま、あまり電車に乗らない経路を活用してオフィスにたどり着いた。
何はなくともマスク。以後、毎日かばんとポケットにスペアを入れて出社するようにしている。
駅にマスクの自動販売機が登場したら結構売れるのではないだろうか。
©Tanu記