狸がプレリュードに乗っていた頃にちょっと流行っていた物があった。
それは、セダンタイプのクルマのリヤトレイ部分に、TOMY製の『七人のこびと』のぬいぐるみを並べて走るということ。
街なかで時々見かけるようになって、若かりしすずめが欲しそうな顔をするようになった。正月に帰省した時に狸の父親をクルマに乗せて走っているとき、そのようなクルマに遭遇した。
狸が『すずめが、(小さい子みたいに)あのぬいぐるみが欲しいって言うんだよ』とか言ったのだろう。言った本人はすっかり忘れていたのだが。
ゴールデンウイークに帰省したら父が嬉しそうに『七人のこびと』のぬいぐるみを出してきた。しかも、プレリュードのリヤトレイに並べて置いても倒れないような台をダンボールでこしらえて、である。
まぁ、すずめの嬉しそうだったこと。父もまんざらではなかったようだった。七人のこびとを揃えた値段を見て『息子(狸)は買えないだろうな』と思ったのだろう。
プレリュードとともにドライブを楽しんでいた七人のこびとたち、翌春にプレリュードをワゴンに乗り換えたのと、いつもリヤトレイにいると退色してしまうからと、家の中に入った。
その後、時々すずめに洗ってもらい、父の形見となった30年近くたった今でもキラキラのまま、すずめの絵本蔵書の一等地に陣取っている。
©Tanu記