半年間の実習が終了した狸が、晴れて正社員に登用されて配属されたのが栃木県の事業所だった。
10月の初めに荷物を運んで小さなアパートに入り一人暮らしを始めた。ここでまず驚いたのが、大家さんが初老の女性だったが、挨拶に行ったら言葉がわからない。栃木弁だったのだが、初めて聞いた狸にはヒアリング不能だった。
そして栃木に住み始めて3週目の朝、やけに寒いなと思いながらもモーターサイクルで会社へ。後で調べたら朝の気温は3℃だった。大阪なら12月の気温だ。極めつけは月末の朝、駐輪場に氷が張っていた。『これは2輪で通勤すると凍死か、滑って転ぶか』と危機を感じて中古車屋に行った。
大阪まで運転することも考えて普通車で、好きなHondaのクルマを買うことに決めた。とは言え新入社員に現ナマは無いので『すぐに乗れて、一番安いHondaのクルマをください』となった。
『これなら格安で来週末には納車できるよ』と中古車屋の店員が勧めてくれたのが、このCIVIC1300GLだった。色は、好きではない、白。なんとなくヨレっとしていたが『20万円ポッキリ、6ヶ月の保証付き』という条件に買うことにした。当時でも既に9年落ちくらいのクルマだった。CIVICならスポーツタイプのRSが欲しかったが、値段は倍以上違ったので買えなかったのだった。
全長356cm、全幅151.5cm、69馬力は、現代の軽自動車とも殆ど変わらない。しかし自分で買った普通車は素直に嬉しかった。
©Tanu記