新生児の手に物を掴まらせると、ギュッと握って離さない。これは動物の母親が、こどもがしがみついたまま走ったり、木から木へとジャンプしたりしても、こどもは落ちない、その能力が人間にも残っている原始反射(手掌把握反射)なのだそうだ。
狸の孫が遊びに来た時に指を手のひらに当てると、反射的に『ギュッと』握ってくるのが面白くて、何度も握らせては遊んでいた。
生後半年ほどの赤ちゃんといえども握力は強くて、指を握られるとなかなか離してもらえない。指の血流が止まってしまいそうだ。
40年近く前に大学生だった頃、地下鉄に乗って通学していた。ある日、ラッシュでもない時刻に乗っていると、隣に赤ちゃんを抱っこした母親が座った。赤ちゃんが狸のことをじーっと見つめるので、自前の変顔をしたりして笑わせていたら、手を伸ばしてきたので何気なく指を掴まらせたところ、ギュッと握ってきた。
さて、その母子が降りる駅になっても離してくれない。当然の成り行きで一緒に降りる羽目になった。降りたら手を離してくれたので次の電車に乗って行き、講義には間に合った。
にゃんことおもちにもよく握らせたものだが、またそんな思い出が巡ってきた。
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